森羅万象すべてのものは生きている
何千年ものむかし、ア−リア人のちの古代ギリシャ人は、青い空や白い雲、海や太陽など森羅万象すべてのものは生き物だと考えました。
長い年月をかけて語り伝えられる間に、青い空は「父なるゼウス」と呼ばれるようになり、人びとはその他たくさんの神々を信じるようになりました。
面白いのは、その神々たちも人間と変わらない欲望に悩まされ、失敗を犯し、恋もするということです。
人びとの生き生きとした想いや想像力が加わって伝承されたこの物語は、のちになって王さまの前で竪琴の調べに合わせて歌われたり、詩人たちによって書きとめられました。それが今日のギリシャ神話になりました。
ギリシャ神話の神々
ゼウスを最高神とするオリュンポス十二神を中心にご紹介します。
ギリシャ名(ラテン名)(英語名)
ゼウスZeus
(ユピテルJupiter)(ジュピターJupiter)。大地の女神ガイアの子クロノスとレアから生まれるが、父クロノスは、生まれてくる子によって王座を奪われるという予言を受けたので、自分の子である竈(かまど)の女神ヘスティア、穀物の女神デメテル、のちにゼウスの妻となるヘラ、海の神ポセイドン、冥界の神ハデスを呑み込んでしまいます。母レアはこれに怒り、末子ゼウスを身ごもると、ひそかにクレタ島でお産をすませ、クロノスには”むつき”でくるんだ石をゼウスだと偽って差し出しました。クロノスはそうとは知らず、それをすぐさま呑み込んでしまいます。
クレタ島に隠されたゼウスはディクテ山の洞窟内で、牝山羊のアマルティアや山のニンフらによって育てられ生き延びていました。やがて成年に達したゼウスは、父クロノスに復讐を思い立ち、まずは秘薬を飲ませて兄弟姉妹を吐き出させました。それからクロノス率いる旧世代とゼウス率いる新世代との壮絶な戦いは10年にも及び、ついに勝利したゼウスはオリュンポス山を拠点として神々の宮殿を構え、自ら最高神として君臨しました。
ヘラHera
(ユノJuno)(ジュノーJuno)。ゼウスの妻。女神の中では一番大きな力を持っていました。ヘラが主役を演ずる神話は少なく、たいていの場合は浮気者の夫ゼウスの恋人やその間に生まれた子供たちに嫉妬し、復讐に燃える脇役的な存在です。にもかわわらず、ヘラはすべての家で尊敬され、結婚した女性が救いを求めに行く結婚の守り神でもあります。彼女の動物は牝牛と孔雀。
母なる女神ヘラ像
ポセイドンPoseidon
(ネプトゥヌスNeptunus)(ネプチューンNeptune)。ゼウスの兄で海の神。エーゲ海に住むギリシャ人にとって重要な存在で、武器は三叉のほこ(トライデント)を持ち、嵐も静寂も彼の支配下にありました。また人間にはじめて馬を与えた神として人びとの厚い信仰を受けています。
タイルの壁飾り小・アテナとポセイドン
デメテルDemeterとペルセポネPersephone
(ケレスとプロセルピナ)(セリーズとパーセファニ)。ゼウスの姉で穀物の女神。ゼウスとの間に娘ペルセポネがいたが、冥界の神ハデスに略奪される。大地の母デメテルがかなしみにくれる間あらゆる植物は芽を出さなくなってしまいました。地上のものが生きて行けなくなることを心配したゼウスは、ヘルメスを冥界に遣わせペルセポネをいったん連れ戻すが、彼女は冥界で食べた4粒のザクロのせいで毎年4カ月だけは冥界に戻らなければいけなくなったのです。母デメテルのかなしみは冬を意味し、四季が生まれました。
アポロンApollon
(アポロApollo)(アポロApollo)。ゼウスとレトの子。ヘラの嫉妬によって苦難の末デロス島で生まれる。アルテミスとは双子の兄妹。弓と予言の神で、生まれてまもなくデルフォイに信託所を開き、真実を求める信徒の質問に答えました。人びとの信仰は厚くアポロンは理想的な青年像として描かれる一方で、母レトを侮辱されたことで起きた”ニオベの子供たちの死”のようにその弓矢で人びとに死をもたらす悲劇的な面も持っていました。
アルテミスArtemis
(ディアナDiana)(ダイアナDiana)。ゼウスとレトの子。アポロンの双子の妹。狩猟の女神で弓矢の名手。森で水浴びをしているところを見られたことに怒り、狩人アクタイオンを鹿の姿に変えてしまい猟犬に襲わせた話などがある。純潔で孤高の処女神は、アフロディテと正反対の女性像として描かれている。
女神アルテミス・ブロンズ像
アレスAres
(マルスMars)(マーズMars)。ゼウスとヘラの子で暴力的な戦いの神。同じ戦いの神でも知的で正義の戦いを導くアテナとはよく対比させられる。
アフロディテAphrodite
(ウェヌスVenus)(ヴィーナスVenus)。”イリアス”の中では、ゼウスとディオネの娘とされているが、のちの詩では、海の泡から生まれたとされている。愛と美の女神で、神がみも人びともすべて誘惑してしまう。彼女の夫は鍛冶の神ヘパイストスだが、戦いの神アレスと浮気をしてエロスを生んだ。
彫刻ヴィーナスの誕生・中
エロスEros
(クピドCupidoまたはアモルAmor)(キューピッドCupid)。アフロディテとアレスの子。愛をつかさどる童神。彼が持つ金の矢は人に恋心を抱かせ、反対に鉛の矢は人を嫌いにさせる魔力を秘めている。この矢はアポロンとダフネの悲恋物語の原因ともなった。
ヘルメスHermes
(メルクリウスMercurius)(マーキュリーMercury)。ゼウスとマイアの子で天空や冥界(死者の国)を駆け巡る神の使者。生まれてすぐアポロンのウシ五十頭を盗み、そのお詫びに亀の甲羅で作った竪琴を贈った。羽の生えた帽子とサンダルをはいて、手には魔法の杖カドウケウスを持っている。旅と商売の守護神。
プラクシテレスのヘルメス・レプリカ胸像
アテナAthena
(ミネルウァMinerva)(ミネルヴァMinerva)。ゼウスと思慮の女神メティスとの子で知恵と戦いの女神。ゼウスは生まれてくる子によって王座を奪われるという予言を受けたため、アテナを身ごもったメティスごと呑み込んでしまう。しかしアテナはゼウスの中で成長し続けました。数年後激しい頭痛に悩まされたゼウスはついに自分の頭を鍛冶の神ヘパイストスに斧で割らせたところ、すっかり成人したアテナが鎧かぶと姿で飛び出したと言われています。
アテネ周辺のアッティカ地方の領有権争いでは、海の神ポセイドンと技を競い合いました。三叉のほこで泉を湧き出させたポセイドンに対し、アテナはいままでこの土地になかったオリーブの樹を生え出させました。軍配はアテナに上がり以来この土地の守護神となりました。
知恵の女神として聖なる鳥フクロウを、戦いの神として勝利の女神ニケを伴うことが多い。
女神アテナ像
ニケNike
(ウィクトリアVictoria)(ナイキNike)。勝利の女神。この女神に関する神話はきわめて少なく、ゼウスやアテナに付き添って、神がみの権威や勝利の象徴として表現されることが多い。美術では、翼のある若い乙女として描かれ、勝利の花輪、オリーブや棕櫚(しゅろ)の枝を持つものがある。現在ルーブル美術館にあるサモトラケのニケが特に有名です。
サモトラケのニケ・レプリカ
ヘパイストスHephaistos
(ウルカヌスVulcanus)(ヴァルカンVulcan)。ゼウスとヘラの子で鍛冶の神。生まれながらに醜いびっこであったため母ヘラによってエーゲ海に捨てられてしまう。海の女神テティスらに救われ、海底深い洞窟で育てられる。やがて復讐するため黄金の椅子を作って母ヘラに贈ったところ、その椅子に座ったヘラは魔法の紐にきつく縛られ身動きができなくなった。困りはてたヘラは酒神ディオニュソスを遣いに出し、ヘパイストスを酒で酔わせてオリュンポスに迎え入れた。
ヘパイストスの妻はアフロディテ。
ヘスティアHestia
(ウェスタVesta)(ヴェスタVesta)。ゼウスの姉で竈(かまど)の女神。アテネやアルテミスと同じ処女神で、その純潔の誓いに称賛したゼウスがすべての神殿において多くの捧げものをヘスティアに与えることを認めた。家庭を象徴し、どこのかまどにもヘスティアが祭られ、人びとは食事の前後にいつも彼女に捧げものをするのだった。
ディオニュソスDionysos
(リベルLiber)(ダイアナイサスDionysus)。ゼウスとセメレの子で葡萄酒の守り神。ヘラの嫉妬と策略にあい、ゼウスは自らの雷で愛人セメレを焼死させてしまう。ゼウスは焼け跡から胎児を取り出し、自分の大腿部に入れて隠した。こうして生まれたディオニュソスはヘラから逃れるように諸国を放浪しさまよったが、大地母神キュベレに出会い葡萄の樹の栽培方法や葡萄酒の作り方、お酒で人びとを酔わせて神と一体化し恍惚感を与える祭儀を学んだ。ディオニュソスはこの祭儀を広め、貧しい人びとや悩める人びとを救い信徒を急激に増やして行った。そして生まれ故郷テーバイに凱旋し、オリュンポス神の仲間入りを果たすのである。
タイルの壁飾り小・ディオニュソス
ハデスHades
(プルトPluto)(プルートーPluto)。ゼウスの兄で冥界(死者の国)の王。ゼウス、ポセイドンの次に地位が高い神でありながら、ほとんど地下の世界から出ることがなかった。ペルセポネの略奪で登場する。
【参考文献】
|